医師の名義貸し（診療所の開設者・管理者）での個別指導、監査の実例です。指導、監査に臨む医師の方は、個別指導に強い弁護士にご相談下さい。

医科の指導監査に強い、弁護士の鈴木陽介です。

サンベル法律事務所は、全国からご依頼を頂き、個別指導と監査の対応業務を行っています。

個別指導、監査には、弁護士を同席させるべきです。まずはご相談下さい。

ここでは、新規個別指導において、医師である開設者・管理者が診療所に一度も言ったことがないなどと発言し、医師の名義貸しが疑われ、個別指導が中断となり、監査、保険医療機関の指定の取消相当となった実例をご紹介します。平成３０年１０月付の取消事案であり、厚生労働省の東海北陸厚生局が公表した事例です。説明のため簡略化等をしています。

個別指導、監査に臨む医師の方は、指導監査に詳しい弁護士への相談をお勧めします。個別指導、監査には、弁護士を立ち会わせるべきです。詳しくは以下のコラムをご覧いただければ幸いです。

【コラム】個別指導と監査の上手な対応法

医師の名義貸し（開設者・管理者）での個別指導、監査の実例

　１　監査に至る経緯

東海北陸厚生局の公表資料によれば、監査に至る経緯は以下のとおりです。

１　新規個別指導の実施

東海北陸厚生局岐阜事務所が、診療所の新規個別指導を行った際に、開設者・管理者である医師の説明等から、次の疑義が生じた。

２　診療所に行ったことがないとの回答

医師から、自身は一度も診療所に行ったことが無いとの回答があ ったため、保険医の名義を貸していたことが疑われた。

３　医師不在の診療報酬の不正請求

唯一の勤務医である非常勤医師は、週１日程度の勤務（通常は自身が開設する愛知県の診療所で診療）であり、医師が不在であるにもかかわらず、診察等を行ったとして診療報酬を不正請求していることが疑われた。

４　常勤との虚偽の届け出

在宅時医学総合管理料及び特定施設入居時等医学総合管理料の施設基準の届出を行うにあたり、常勤ではない医師を常勤の医師として届出を行っていることが疑われた。

５　指導の継続困難での指導中断

これらの名義貸しなどの疑義について、医師に説明を求めたところ、保険診療については一切知らないと発言したため、これ以上の指導継続が不可能と判断し、指導を中断した。

６　保険医療機関の廃止届の提出、監査の実施

その後、平成24年９月12日付けで保険医療機関の廃止届が提出されたが、 保険医療機関の指定申請に当たり、保険医として名義を貸していたこと及び診療報酬の請求に不正又は著しい不当が強く疑われたため、監査を実施した。

　２　取消相当の主な理由

当該保険医療機関の監査を実施した結果、以下の事実を確認した。

１　虚偽の保険医療機関指定申請

実際には保険医療機関の保険医として勤務する予定のない者を、保険医療機関指定申請書に保険医であると記載して、保険医療機関の指定を申請していた。

２　付増請求

実際に行った保険診療に行っていない保険診療を付け増して、診療報酬を不正に請求していた。

３　虚偽の施設基準の届出

保険医療機関指定申請時に、実際には施設基準要件を満たしていないにもかかわらず、満たしているものとして届出を行い、当該施設基準に係る診療報酬を不正に請求していた。

【再指定等】
原則として、指定の取消相当の日から５年間は、保険医療機関の再指定は行わない。

【根拠条文】
保険医療機関の指定の取消
　保険医療機関又は保険薬局の指定の取消を定めた健康保険法第80条第１号、第２号、第３号及び第６号

　３　診療報酬の不正、不当請求金額

東海北陸厚生局の公表資料によれば、監査において確認した不正、不当請求の金額は、以下のとおりです。

平成２２年１０月分〜平成２４年９月分
　不正請求　３２名分　３１２件　３８７万０９６６円
　不当請求　　７名分　　５８件　１４６万６２００円

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